六月の桜
一週間ほど前に読んだ本ですが、今日はこの『六月の桜 -伊集院大介のレクイエム-』について書こうと思います。
この帯の説明が、かなり明確に内容を示していると思うので転写すると、「世間から孤立した大金持ちの老人と、いじめを受けて学校で孤立する少女。傷を舐め合うように二人は接近し、あってはならない関係に堕ちてゆく。-桜の狂気か情念か?」というお話です。
栗本薫さんの講談社の推理小説では、伊集院大介という名探偵が登場し、人間模様を読み解くことによって事件を解決していきます。今回のお話も、トリックやアリバイなどがちりばめられた作品というよりは、過去を背負った人間と、現在の不遇に耐える少女の心の動きを追うことによって、真実を見出していく作品…と言えるでしょうか。
グインサーガのSF的な要素も含む三国志、大正浪漫を軸とした作品群、そして現在の日本を題材とした推理小説、このあたりが最近の主軸の作品だと思うのですけれど、今回は”今”の少女と老人を中心とした話だったので、あまり感情移入したり、ファンモードになって読むようなことはありませんでしたね…。その分客観的に、子供の意思を無視した先生や親の様子を観察しながら、今の自分の反省材料にしたりしていました。やはり、庇護を受けるべき年齢なのに、誰からも認めてもらえなかった、というところから全てが狂っていったたような気がしてならないのです。大人だって、人から認めてもらえればうれしいし、舞い上がりもします。それが、少女時代に逆の仕打ちしかなかったら、話を聞いて自分を認めてくれる人になびき堕ちていったとしても、それは当然の結末でしょう。
子どもにとっての親、先生という、身近な大人の責任というものについて、ちょっと考えてしまった一冊でした。
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