昨日の記事の続きです。
そんな経緯があって訪れることになった不識庵。場所は、江ノ電の「稲村ガ崎」から、徒歩10分くらいの山の上にあります。本当にここかしら?とちょっと不安げに階段を登っていくと、昨日の記事の写真にあるような庵が見えてきました。
見た目は普通の一軒家なので、あれ?ここかな?と思っているうちに、ようこそいらっしゃいました、と声をかけていただき、中へ…。入ると、炭を焚いておいてくださったのでとてもいい香りがします。ごく普通のお宅の一室、という雰囲気の部屋に通されると、さっそく次々とお料理を出してくださいました。
ほうれん草の海苔和えは私もよく作る定番メニューですが、菊の酢の物やしいたけと一緒になっていて、全く別物でした(笑)。椎茸の出汁だったのでしょうか。とてもおいしかった。
白和え大好きな私は、里芋と柿の白和えも目からうろこのお料理だったのですが、それにも増してこの黒胡麻豆腐がおいしかった。このぷりぷり感はすごいです。柚子胡椒でいただくのも初めてでしたが、自分で作るとこの弾力が出ないんですよね…。
手前が、キノコのとろろかけ。椎茸の出汁がとてもきいていて、滋養分一杯、って思いました。奥が炊き合わせ。右がのっぺい汁。この緑は、ネギではなく大根の葉っぱで、しゃきしゃき感がとてもよかったんです。生姜の香りの強い、今までいただいたことのないのっぺい汁でした。
そしてむかごの炊き込みごはん。むかごは、小さい頃、”家の庭を探検してとってくるもの”だったので、もう本当に何年食べてなかったのでしょう。懐かしい味でした。
椎茸のステーキもおいしかったけれど、この右のデザート。長芋のきんとんなんですけれど、これにかけられた蜜は、きっと想像できないことと思います。何だと思いますか…?実はテキーラというお酒の材料となる、竜舌蘭(サボテンのような植物)の蜜なんです。蜂蜜よりもさっぱりとした、爽やかな甘さでした。
あ…天ぷらを忘れていました。『かきフライ』です。でも、牡蛎じゃありません(笑)精進料理ですから。大和芋と、青海苔の磯の香りで、牡蛎もどきになっていました。そして、名実ともに『柿フライ』は、とっても甘くなってとろけるようで、まるでデザートでした。
このように、だしは鰹を使わず、蜜は蜂蜜を使わず、野菜のみで作られたお料理がここまで多彩なメニューになっていたのには、本当にびっくりでした。でもそれ以上に、どの味付けも淡いところが気に入ったんですね…。素材が生きた味付けというのでしょうか。おなか一杯になっても全くもたれなかったんです。
このあと、不識庵を訪れるきっかけをお話したところ話が盛り上がり、ご住職と中島さんが会った時の話とか、今では奥様が、精進料理海外でも教えていらっしゃることなど、いろいろなお話を聞くことができました。そして、ちょうど発刊されたばかりの『鎌倉・不識庵の精進レシピ 四季折々の祝い膳』に、今日のメニューがかなり含まれていると知り、これは!とばかりに買い求めて持ち帰ってきました。 それを読んで改めて、料理方法だけでなく、素材を使い切ることが命を大切にいただくことだ、という考え方などに触れることができて、とても新鮮でした。自分でも作ってみたら、また報告したいと思います。
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